vol.04 《魔法》

「やめろ！」力なく立ちあがった騎士が叫んだ。血に飢えた大蜘蛛リネ2 RMT rmtと愚かな巡礼者、そのどちら信長の野望に叫んだのかは分からない。
　騎士の甲冑具足すべてが、さながら陽射しを浴びた氷像の表面のように溶け落ちて、水たまりのように床に広がったのだ。鎧の部分Tales Weaver rmt部分は、ひとかたまりに集結して、むっくりと身をおこし、がらんどうの球形兜が、主人を探す猟犬のように首をめぐらせた。

　そのような超常現象を目の当たりにし、聖はまたとない直観を授かった。

「来い！」聖は呼んだ。「こっちだ。こっちに来るんだ。わたしにしたがえ！」

　生ける鎧は、犬のように吠えるかわりに、あらゆる種類の金属製打楽器に似た響き、唸（うな）り、共鳴、そして高らかな歌声をあげて、新たな主人に駆けよった。

　竜の腕のような籠手はサソリの尾のように腕の部分を高くかかげ、鉤爪の生えた五指をうごめかせて床を這う。

　鱗帷子はその鱗一枚一枚をそれぞれ一匹の小魚のようにきらめかせ、帷子全体をエイが海底を泳ぐときのように激しく波打たせて宙を飛ぶ。